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ハンドメイドの価格設定

ハンドメイドの価格設定
「赤字にならない最低価格」の出し方

価格設定でいちばん怖いのは、売れているのに手元にお金が残らないこと。販売手数料と送料を引いたら原価割れ、というのはよくある事故です。そこでこの記事は ①原価×掛け率で売値を決め → ②手数料・送料から逆算して「赤字にならない最低価格」を出す という2段構えで、アクセサリー(ピアス)の実数つきで手順化します。

最終更新:2026-06-29

結論:価格は「掛け率で攻め、手数料の逆算で守る」

先に結論だけ。価格設定は次の2本の式で決まります。攻めの式で希望価格を出し、守りの式でそれが赤字でないかを確認します。

① 売値の候補(攻め)

売値 = 原価 × 倍率(3〜5倍) = 原価 ÷ 原価率(20〜33%)

② 赤字にならない最低価格(守り)

最低価格 =(原価 + 自己負担の送料)÷(1 − 手数料率)

①で出した売値が②の最低価格を下回っていたら、その値段は売るほど赤字です。以下、ピアスを例に数字を入れていきます。

ステップ1:原価を「材料費以外」まで洗い出す

多くの作家さんは材料費だけを原価だと思っていますが、1点に必ず付いてくる包装・台紙も原価です。これを入れ忘れると最低価格がまるごとズレます。ピアス1点の原価を例にします。

原価の項目金額(1点あたり)
ピアス金具(ペア)40円
ビーズ・チャーム等のパーツ90円
接着剤・テグス・丸カン(1点あたりに按分)20円
台紙・OPP袋(包装資材)30円
原価合計180円

材料は「使った量」ではなく「1点に使った分」で考えます。たとえばパーツを10個入り300円で買って1点に2個使うなら、原価は60円です。接着剤のように1点ずつ量れないものは、ざっくり按分で構いません。

ステップ2:掛け率(原価率)で売値の候補を出す

ハンドメイドでよく使われる目安は 原価の3〜5倍(=原価率20〜33%)。原価率は「売値に占める材料費の割合」で、低いほど利益とデザイン料・手間賃の取り分が増えます。原価180円のピアスで計算するとこうなります。

原価率(倍率)計算売値の目安
約33%(×3)180 × 3540円
25%(×4)180 × 4720円
20%(×5)180 × 5900円

倍率はあくまで出発点です。「3倍だと安すぎる気がする」「5倍は相場より高い」と感じたら、次のステップで赤字ラインを確認してから、相場とにらめっこで微調整します。倍率だけで決めると、手数料の重い販路で赤字になることがあるからです。

ステップ3:手数料・送料を逆算して「赤字にならない最低価格」を出す

ここがこの記事の核心です。販売プラットフォームで売ると、振り込まれるのは 売値 −(販売手数料)。さらに送料を自己負担(送料無料で出品)するなら、手元に残るのは 売値 − 手数料 − 送料 です。これが原価を下回らない条件が「赤字にならない」ラインです。

売値 ×(1 − 手数料率)− 自己負担の送料 ≧ 原価

これを売値について解くと——

最低価格 =(原価 + 自己負担の送料)÷(1 − 手数料率)

原価180円のピアスを、minneで・ネコポス送料200円を自己負担(送料無料表示)で売る場合に入れてみます。販売手数料はおよそ10.89%(税込)とします(料率の確認は後述)。

最低価格 =(180 + 200)÷(1 − 0.1089)
     = 380 ÷ 0.8911 ≒ 426円

つまり 430円を切ると、売れても1円も残らない(むしろ赤字)。検算すると、売値430円なら手数料は約46円、手取りは 430 − 46 − 200 = 184円。原価180円とほぼトントンで、利益はわずか4円です。ステップ2の倍率(540〜900円)はすべてこのラインを上回っているので、原価割れの心配はありません。逆に「相場に合わせて500円に下げたい」というときは、この430円が下限の目安になります。

※ minneの手数料は【作品価格+購入オプション+送料】に対してかかるなど、手数料の対象範囲は販路ごとに異なります。正確な手取りは各販路の売上明細でご確認ください。ここでは「送料は実費で出ていく/手数料は売値にかかる」という最も起こりやすいケースで計算しています。

委託販売は手数料率を入れ替えるだけ

同じピアスを実店舗の委託ショップに置く場合も、式はまったく同じ。手数料率のところに委託手数料を入れるだけです。委託手数料はお店によって幅がありますが、20〜40%が一つの目安。ここでは35%、店頭販売なので自己負担の送料は0円として計算します。

最低価格 =(180 + 0)÷(1 − 0.35)= 180 ÷ 0.65 ≒ 277円

委託の赤字ラインは約280円。プラットフォーム(430円)より低く見えますが、これは送料の自己負担がないぶんです。委託は手数料率が高い代わりに送料がかからないことが多いので、同じ作品でも販路によって最低価格は変わると覚えておくと安全です。販路ごとに最低価格を並べると、どこで売るかの判断もしやすくなります。

売り方手数料率(目安)自己負担送料赤字にならない最低価格
プラットフォーム出品(送料無料表示)約10.89%200円約430円
委託ショップ(店頭)35%0円約280円
イベント・手渡し0%0円180円(=原価)

最低価格はゴールではない:手間賃を必ず乗せる

ここまでの「最低価格」は現金として赤字にならないラインであって、適正価格ではありません。あなたの制作時間(手間賃)が1円も入っていないからです。最低価格で売ると、実質タダ働きになります。

たとえば先ほどのピアスをminneで900円で売ったとき、手元に残る現金は 900 − 98(手数料)− 200(送料)= 602円。原価180円を引いた利益は422円です。制作に40分かかっているなら時給は 422円 ÷ (40/60)時間 ≒ 633円。これを「安い」と感じるなら、価格を上げるか、送料込み価格に切り替える(送料を売値に組み込む)か、制作時間を短くするかのいずれかです。「最低価格+手間賃+利益」で値付けする——これが、売れても疲弊しないための基本姿勢です。

手数料率は変わる:暗記でなく「計算式」を持つ

本記事の料率は、2026年時点で確認した代表的な値です(参考:minne 約10.89%・Creema 約10.67%・メルカリ 約10%/いずれも税込・条件により変動)。手数料は改定されます(実際2025年11月にも複数サービスで改定がありました)。最新の料率は必ず各サービスの公式料金ページでご確認ください。

大事なのは料率の暗記ではなく、料率が変わっても使える計算式を持つことです。最低価格=(原価+送料)÷(1−手数料率) さえ覚えておけば、来年料率が変わっても、別の販路に出しても、数字を入れ替えるだけで赤字ラインが出せます。

原価と手数料の集計は、ツールで一発にする

価格設定で時間を食うのは、計算式そのものより「原価・手数料・送料を1点ずつ集めて合計する」作業です。ここを手でやると、販路が増えるほど抜け漏れます。売れたあとの実際の利益・利益率の確認は、各販路の売上CSVを読み込むだけで自動化できます。

minne・Creema・メルカリ・BASEなどの売上CSVを読み込むだけ。販売手数料・送料・原価を差し引いた利益・利益率・月別を自動集計します。「この価格で本当に黒字か」を、売れたあとの実データで確認できます。ファイルはブラウザ内で処理し、どこにも送信しません。

→ 無料で売上CSVを集計する

原価(材料費)を1点ずつ記録しておくと、価格設定も決算もぐっと楽になります。費目区分で書くだけのテンプレもどうぞ。

→ 経費区分テンプレ(CSV・記入例つき・無料)をダウンロード

関連:ハンドメイドの原価計算のやり方ハンドメイドの売上管理・帳簿minneの手数料計算

※ 本記事は価格設定の考え方と計算方法を整理した一般的な解説です。各サービスの販売手数料・委託手数料は変更されるため、最新は各社の公式情報をご確認ください。売上規模に応じた確定申告の要否や消費税・税額など税務上の取扱いは、税理士または所轄の税務署にご確認ください。当ツールは集計・整理までを行い、税の判断は行いません。