原価計算でつまずく原因は、ほぼ1つです——「まとめ買いした材料を、1作品いくら分使ったか」を出せていないこと。結論から言うと、1作品の原価は次の3つの足し算です。
原価 = 材料費(1個あたりに按分)+ ロス分 + 道具・備品の按分。このページは、この式をピアス1作品の実数で最後まで通して計算します。
原価とは「その作品を1つ作るためにかかった費用」です。ハンドメイドでは材料をまとめ買いし、道具も使い回すので、丸ごとの購入額ではなく1作品あたりに割り戻した金額で考えます。式はこれだけです。
① 材料費(按分)= まとめ買い額 ÷ そこから取れる個数(または使用量で割る)
② ロス分= 材料費 ×ロス率(失敗・端材・試作の見込み)
③ 道具・備品の按分= 道具の購入額 ÷ その道具で作れる想定個数
1作品の原価 = ①材料費 + ②ロス分 + ③道具按分
多くの人が①だけ(しかも丸ごとの購入額のまま)で止まってしまい、「思ったより儲からない」となります。②③まで入れて初めて、値づけや利益の判断に使える原価になります。以下、順に埋めます。
ここが最大の山場です。やることは割り算1つ——まとめ買いした金額を、そこから取れる個数(または使った量)で割るだけ。UVレジンのピアスを例にします。
| 材料 | 買い方(まとめ買い) | 1作品の使用量 | 1作品あたり |
|---|---|---|---|
| UVレジン液 | 500g=2,000円 | 15g | 60円 |
| ピアス金具 | 10ペア=600円 | 1ペア | 60円 |
| 着色剤・ラメ | 1本=800円(約50作品分) | 1/50本 | 16円 |
| 台紙・ラッピング袋 | 100セット=500円 | 1セット | 5円 |
| 材料費 合計(①) | 141円 | ||
計算例:レジン液は 2,000円 ÷ 500g × 15g = 60円。金具は 600円 ÷ 10ペア = 60円。「グラム単価×使用量」か「1袋の値段÷入数」のどちらかに必ず落ちます。使用量がうまく測れない着色剤などは「1本で何作品ぶん使えるか」をざっくり決めて割れば十分です。
実際には、気泡・割れ・色ムラ・試作で作った全部が売り物にはなりません。失敗した分の材料費も、売れた作品が背負っている本当のコストです。これを「ロス率」として材料費に上乗せします。
材料費合計 ÷ 完成して売れた個数 から逆算すると、自分の実際のロス率が分かります。今回はロス率15%とすると、141円 × 1.15 = 約162円。材料費141円に対し、ロス分は約21円です。
UVライトやモールド(型)など、繰り返し使う道具も原価の一部です。道具の値段 ÷ その道具で作れる想定個数で、1作品あたりに薄く乗せます。
| 道具・備品 | 購入額 | 使い切るまでの想定個数 | 1作品あたり |
|---|---|---|---|
| UVライト | 3,000円 | 約500個 | 6円 |
| シリコンモールド | 800円 | 約200個 | 4円 |
| 道具按分 合計(③) | 10円 | ||
「想定個数」は精密でなくて構いません。3,000円 ÷ 500個 = 6円 のように、ざっくりでも入れておくのが大事です。なお高額な機材は会計上べつの扱いになる場合がありますが、原価の感覚をつかむこの段階では「想定個数で割る」で十分です。
①②③を足すと、この作品1個の実原価が出ます。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 材料費 | 60+60+16+5 | 141円 |
| ② ロス分 | 141円 ×15% | +21円 |
| ③ 道具按分 | 6+4 | +10円 |
| 1作品の実原価 | 約172円 |
材料費だけ見ていた141円に対し、実原価は172円。2割強(約22%)大きくなりました。値づけや「これ、利益出てる?」の判断は、必ずこの実原価を起点にします。
原価が出たら、最後に販売価格から手数料・送料・原価を引いて手取り(利益)を見ます。式は料率が変わっても使えます。
手取り利益 = 販売価格 −(販売手数料)−(出品者負担の送料)− 実原価
例:販売価格1,200円・販売手数料率10.56%・ネコポス送料210円(出品者負担)の場合——1,200 − 127(手数料)− 210(送料)− 172(原価)= 691円。手取りは約691円、販売価格に対しておよそ58%です。
原価計算は一度やって終わりではなく、材料を買うたびに記録しておくと、按分(①)が常に最新の単価で出せます。買ったときに「日付・費目区分・品目・金額・入数(取れる個数)・販路」を残すだけでOK。あとは 金額 ÷ 入数 で1作品あたりがそのまま出ます。
この列で記録できる無料CSVテンプレ(記入例つき)を用意しています。記入例にはこのページの計算(UVレジン液 2,000円÷33=約60円、金具 600円÷10=60円…)をそのまま収録しているので、自分の材料に置き換えるだけで使えます。Excel・Googleスプレッドシート・Numbersで開けます。
→ 原価の記録テンプレ(CSV・記入例つき・無料)をダウンロード
そして売上の側は、各プラットフォームの売上CSVを読み込むだけで売上・販売手数料・送料・原価を区分ごとに自動集計。手取り利益・利益率・月別もそのまま出ます。ファイルはブラウザ内で処理し、どこにも送信しません(登録不要・無料)。原価の取りこぼしや手数料の引き忘れも、ツールに通せば一発でチェックできます。